ナギの整理箱

日々考えたことを書きます。

父親の実家に行った

久しぶりだった。1年以上ぶりだったかもしれない。

 

今回は、知りたいこともあった。叔父さんの病気のことだ。

叔父さんは、私が物心ついた時から働いてなかった。よく遊んでくれる優しいお兄さんの印象だったが、祖母によると「頭の病気」だそうだった。

大人になれば分かるが、おそらくこれは精神疾患だろう。精神疾患には多少なりとも遺伝が関わる場合もあると知ったので、叔父さんの病名だけでも知っておきたかった。

 

家に着いた時、珍しく父親は外出していて、祖母と叔父さんだけがいた。久しぶりだったから祖母と大変会話が弾んだ。その中で、「これはパパには内緒にしてあげてね」「パパは心配させたくないと思ってるだろうから、あなたには言ってないと思うけど…」と前置きして、いろいろ教えてくれたことがあった。

 

アルコール依存症エスカレートし、1日に一箱分のビールを飲む日々が続いたこと。

とある日、酒を飲みすぎて部屋で倒れ、打ち所が悪く脳内で出血を起こし、手術をしたこと。

医者から「もう断酒してください。これ以上飲んだら肝臓がんになり、命はないです」と言われたこと。

断酒はできたものの、今度は肺がんになり、入院はせず毎週病院に通っていること。

 

祖母が、手がかかって本当に困るわ、と明るく話してくれたおかげでその時は深く考え込まなかったが、時間が経ってひとつひとつの事実を飲み込むのが、重すぎてはち切れそうだった。

 

めちゃくちゃだ。

 

話の中で、叔父さんの病気についても聞くことができた。それは、統合失調症だった。

私たちには見せてなかったけど、叫んだり暴れたりと、症状が落ち着くまで20年以上費やしたらしい。何度も入院をしてお金も失ったと。近所の人には怖がられ、本当に大変だったようだ。これから先は死ぬまで薬を飲んで、寛解状態を維持していくらしい。

 

80代後半の祖母と、統合失調症の叔父さん、そして肺がんの父親。祖母が精神を病まずに毎日元気に家事をこなして明るくハキハキ話しているのが本当にすごすぎた。

あまり考えたくなかったけど、この家の未来が少し見えてしまった気がしたのだ。おそらく、父か祖母が先に亡くなる。そして、叔父さんが、障害年金で死ぬまでここで細々と暮らすのだろう。

たとえ父がいなくなっても、どんなに忙しくても、私はこの家に来ることをやめてはいけないと思った。

 

私はいつもここに来ると、お手洗いを借りる。

お手洗いまでの道中に、父親の居室がある。そこをこっそり覗いて帰るのだ。

前回は、冷蔵庫に溢れんばかりのスーパードライが入っていた。その量は病的で、思わず目を見張った。

今回は、スーパードライは一本も入ってなかった。代わりに、よくわからない薬が大量に入っていた。

 

部屋には、妹の成人式の写真、七五三の写真、それから私の大学の卒業式の写真が綺麗に飾ってあった。

 

父親に、弟の写真を見せてあげた。弟は、父の写し鏡かと思うほど、性格も容姿も父親そっくりなのだ。ただ、10年前に離婚してから、父親は一度も弟の姿を見ていない。

 

父親は、写真をズームアップして、はは、そっくりだな、とそっと笑った。

弟の仕事を教えてあげると、地図で職場の場所を探して、ああ、ここだな、と楽しそうにしていた。

 

口では言わないだろうけど、会いたいんだろうな。弟を連れてきてあげたいけど、彼も結構センチメンタルなことを知っているので、それが良いことなのか、正直分からないのだ。

 

このまま死ぬまで会うことができないんだろうか。それがお互いにとって正解なんだろうか。私にはわからない。